『櫛買ひに』渡邉美保句集(俳句アトラス)より
蚊母樹(いすのき)のすさびやすくてみそさざい
イスノキがどんな樹だったかすぐに思い出せないものの、ひょんの実(虫こぶ)のできる樹だと思えば、なんとなく佇まいが浮かんでくる。ミソザサイは、残念ながらまだ出会ったことがない。図鑑で見る限り小さくて茶色の地味な鳥。冬は低地に下りてくるので、冬の季語になっているらしい。両者の質感には通じるものがあるように思う。みそさざいの句は句集中に他にもあるので、作者には親しい鳥なのかもしれない。
土に釘つきさす遊び桃の花
山積みの二百十日のバナナかな
美しく雨粒はじく鵙の贄
ほがらかに枯れはじめたる箒草
きのふ鷺けふ少年の立つ水辺
てのひらに女雛のやうなふきのたう
さくらんぼもの言ふ口を見てをりぬ
花冷えの手に渡さるる特急券
紋白蝶呼んで弁当開きけり
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