句集『また明日』 太田うさぎ (左右社)
句集から句を引く時、どの読み手も共通の句をあげる句集と、人によってあげる句がバラバラの句集がある。この句集『また明日』は人によって違う方のタイプではないかと感じた。私ひとりの中でも、読むたび違う句に目が留まりそう。
鯉に落ちたり白鳥の飲み零し
「恋に落ちる」と音が通じるのも隠し味としてあるのかもしれない。場面を想像すると、変な瞬間を見ているなぁと可笑しい。鯉も白鳥も、きっと何も気にしないけれど、見ている作者には気になった。
空をまだ虹の成分ただよへる
美しいだけでなく、虹をみて嬉しく堪能したという気分が出ていて微笑ましい。
Tシャツに曰くバナナの共和国
ふふ、バナリパですよね。句歴二十数年の第一句集というと、名句然とした句を並べたくなりそうだけれど、こういう軽い味わいの句も多く収められている。
冬薔薇や二頭で動くドーベルマン
校庭の隅に心臓持つ兎
豆撒や耳のうしろに耳の影
フラダンス笑顔涼しく後退る
惜春や貝に盛らるる貝の肉
ラグビーの主に尻見てゐる感じ
とこしへは何やら眠し吊し雛
立秋の庭木に触れて家に入る
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