句集『円卓』川嶋一美(ふらんす堂)
夏薊刈られる丈となりにけり
アザミの花も、咲いていればそれなりに美しい。でも雑草だから、刈られてしまう。公園のようなところでは、草がある程度茂ってくると、シルバー人材センターから派遣されて来た人が、電動の草刈り機で一斉に草を刈る。そんな光景を捉えたのかもしれないが、「刈られる丈となりにけり」という表現は、悲観的ではない。アザミも、刈られても根が残っているから、来年もたくましく生えてくるだろう。ものごとをそのままに受容する強さが感じられる。
滝の道あかるくなりて滝が見え
頂上を踏んできし靴星月夜
冬の蝶いづれも後ろ姿なる
鯛焼のおろそかならぬ鱗かな
雀より地味な鳥ゐる芽吹きかな
塩振れば雨の音する春キャベツ
鉤形に田を来る猫や夕桜
あたたかや幼き貝は竜頭ほど
末の子の皆に見られて豆御飯
小春なり象に飲む水遊ぶ水
0 件のコメント:
コメントを投稿