2021年5月22日土曜日

句集『円卓』 川嶋一美

 句集『円卓』川嶋一美(ふらんす堂)


夏薊刈られる丈となりにけり

アザミの花も、咲いていればそれなりに美しい。でも雑草だから、刈られてしまう。公園のようなところでは、草がある程度茂ってくると、シルバー人材センターから派遣されて来た人が、電動の草刈り機で一斉に草を刈る。そんな光景を捉えたのかもしれないが、「刈られる丈となりにけり」という表現は、悲観的ではない。アザミも、刈られても根が残っているから、来年もたくましく生えてくるだろう。ものごとをそのままに受容する強さが感じられる。


滝の道あかるくなりて滝が見え

頂上を踏んできし靴星月夜

冬の蝶いづれも後ろ姿なる

鯛焼のおろそかならぬ鱗かな

雀より地味な鳥ゐる芽吹きかな

塩振れば雨の音する春キャベツ

鉤形に田を来る猫や夕桜

あたたかや幼き貝は竜頭ほど

末の子の皆に見られて豆御飯

小春なり象に飲む水遊ぶ水





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