2020年6月5日金曜日

『瑞瑞しきは』関根誠子句集

『瑞瑞しきは』関根誠子句集(ふらんす堂)

熟考の果に眠気の来ててふてふ

考えていると眠くなるのは、私なんてしょっちゅうのこと。
蝶のひらひらした動きも、てふてふという表記も、ほんとに眠そう。というか、もう既に寝ている感じ。


冬近し寝しなに荒らす菓子袋

「荒らす」という表現が小動物のようで可笑しい。冬近し、というのも冬眠前の腹ごしらえのようで。実際お菓子を食べるのは自分なのだと思うけれど、茶目っ気たっぷりに客観視している。


山門を春だの寒いだのとくぐる

誠子さんの以前の句に「ビールないビールがない信じられない」があって、台詞の臨場感に驚いた。この山門の句も話している人々が目に浮かぶよう。「春だの」がリアルなんだと思う。



写真撮れば写る我等や柳の芽

湯畑やとても涼しく傘が邪魔

桃咲いて来へんきてへん誰もゐてへん

花ぐもり蛸のすさりの綿密な

大年や湯気もろともに出汁移す

縄文広場の風にひろげる栗ごはん

週間天気予報の中のお元日




自由な精神を感じさせる句集。最近、気持ちも縮こまりがちなのですが、すこし明るくなるよう。










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