2020年8月4日火曜日

『符籙』 橋本直

『符籙』橋本直 (左右社) 


貂の眼を得て雪野より起き上がる

ファンタジックな味わいの一句から句集が始まる。


聖樹いつも星に吸はれてゐる形

クリスマスツリーのてっぺんの星を詠んだ句はよく見かけるけれど、ダントツで変。可笑しいし、生々しい感じもする。


遠足のまたも時代を間違へる

タイムトラベルしながら永遠に遠足。SF風の味わいをもつ作品は他にもあった。


馬の目の高さで歩く雪の森

生牡蠣をまの口で待つ人妻よ

江戸城の蜜吸ひにゆく黒揚羽

宦官の笑む顔に似て桃の種

いくつかの言語の咳の響きけり

幾らでもバナナの積めるオートバイ


『符籙』というタイトルも凝っている。自然体という感じではなく、作者の趣味の行き渡った句集のように思う。






0 件のコメント:

コメントを投稿