貂の眼を得て雪野より起き上がる
ファンタジックな味わいの一句から句集が始まる。
聖樹いつも星に吸はれてゐる形
クリスマスツリーのてっぺんの星を詠んだ句はよく見かけるけれど、ダントツで変。可笑しいし、生々しい感じもする。
遠足のまたも時代を間違へる
タイムトラベルしながら永遠に遠足。SF風の味わいをもつ作品は他にもあった。
馬の目の高さで歩く雪の森
生牡蠣をまの口で待つ人妻よ
江戸城の蜜吸ひにゆく黒揚羽
宦官の笑む顔に似て桃の種
いくつかの言語の咳の響きけり
幾らでもバナナの積めるオートバイ
『符籙』というタイトルも凝っている。自然体という感じではなく、作者の趣味の行き渡った句集のように思う。
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