句集『サーチライト』西川火尖 (文學の森)
西川火尖さんの第一句集。第11回北斗賞受賞により作成されたもの。
火尖さんと初めて会ったのは、彼が学生の時なのでかなり昔。しかし、ふだん句座を共にしているわけではなく、まとまった作品を読むのは初めて。
不時着の二人と思ふ冬菫
甘さと切なさを含んだ抒情の句がひとつの特徴だろうか。彼が結婚した年に貰った年賀状だったか、空っぽの部屋に立つ二人の写真を見て、駆け落ちみたいだと感じたことを思い出した。作者と作品は別に考えなければならない。と言ってもこれは自画像だろう。
立つたまま化粧の終はる冬の虹
女性へ向ける視線には驚きとリスペクトがあるようだ。
蛇口まで子を連れてゆく下萌える
はらぺこあおむしは覚くんだと読み聞かす
草いきれ何を喜ぶ子になるか
子の問に何度も虹と答へけり
子育ての句は実感がある。吾子俳句というよりは、父としての自分の思いに焦点が当たっている。
穭田を粒子の粗い友が来る
煤掃や喋るラジオを持ち上げて
付けて名を呼ぶことの無き金魚かな
蕨餅食へよ泣きながら食ふなよ
出てくる作中主体は気弱だが、句集を通しての個性の主張は強い。句集を作るのには費用がかかり、ハードルが高い。若手の句集を賞の副賞として出版できるのは有意義なことだと思う。
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