句集『夏夕日』 河内静魚 (文學の森) より
九月まで耳を忘れてゐたりけり
今の時期の蒸し暑さは体にこたえる。これから本格的な暑さが続くようになると、身体が夏仕様になり、夏に耐えるため、いろいろな感覚が違ったバージョンになるような気がする。その感覚が少しずつ戻ってくるのが九月ごろだろうか。八月にはもろもろの戦争関連の事があるが、それに絡めて読まないほうが好み。
空といふ大きな寒さありにけり
変わって寒さの句。特に前書きは無いが、前後の句が京都の句なので、これも京都の寒さなのかもしれない。この句の場合、その情報があった方がいいのかどうか、ぐるぐる考えているがまとまらない。
おとなしい尻曳いてゐる兜虫
夕立にすこし冷やされ西銀座
山々の集ひやすさよ花きぶし
あぢさゐや斜めの雨は見えやすし
ハーモニカたうもろこしを甘くする
象の群見てゐるやうに年送る
舌にある菫の味や初寝覚
飛んでゆく方向のあり春の鳥
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