2018年7月4日水曜日

句集『夏夕日』河内静魚

句集『夏夕日』 河内静魚 (文學の森) より


九月まで耳を忘れてゐたりけり

今の時期の蒸し暑さは体にこたえる。これから本格的な暑さが続くようになると、身体が夏仕様になり、夏に耐えるため、いろいろな感覚が違ったバージョンになるような気がする。その感覚が少しずつ戻ってくるのが九月ごろだろうか。八月にはもろもろの戦争関連の事があるが、それに絡めて読まないほうが好み。


空といふ大きな寒さありにけり

変わって寒さの句。特に前書きは無いが、前後の句が京都の句なので、これも京都の寒さなのかもしれない。この句の場合、その情報があった方がいいのかどうか、ぐるぐる考えているがまとまらない。


おとなしい尻曳いてゐる兜虫

夕立にすこし冷やされ西銀座

山々の集ひやすさよ花きぶし

あぢさゐや斜めの雨は見えやすし

ハーモニカたうもろこしを甘くする

象の群見てゐるやうに年送る

舌にある菫の味や初寝覚

飛んでゆく方向のあり春の鳥






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