2019年8月2日金曜日

句集『木耳』 滝川直広

句集『木耳』 滝川直広 (文學の森) より

地より起こされて茅の輪となりにけり 

厄除けの茅の輪が神社にあるのは見たことがあるし、くぐったことも何回かある。でも、その制作過程や設置される場面を見たことはない。その体験がなくても、鮮やかにイメージできる一句。立てられた瞬間、命が宿ったように見えたことだろう。


なかぞらのふくみきれざる飛花落花

むつかしきかほの赤子や合歓の花

水音のかぶさる秋の畳かな

木枯やひとつの部屋で何もかも

景色置き去りスケートに滑り出づ

亡き母の小言の終る昼寝覚

冬の虹弧のみじかきが残りたる

水換へて黙あたらしき海鼠かな

煙茸ふみたき子らに数足らず

木耳の透けて血管らしきもの


映像喚起力の高い句が並ぶ。


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