句集『木耳』 滝川直広 (文學の森) より
地より起こされて茅の輪となりにけり
厄除けの茅の輪が神社にあるのは見たことがあるし、くぐったことも何回かある。でも、その制作過程や設置される場面を見たことはない。その体験がなくても、鮮やかにイメージできる一句。立てられた瞬間、命が宿ったように見えたことだろう。
なかぞらのふくみきれざる飛花落花
むつかしきかほの赤子や合歓の花
水音のかぶさる秋の畳かな
木枯やひとつの部屋で何もかも
景色置き去りスケートに滑り出づ
亡き母の小言の終る昼寝覚
冬の虹弧のみじかきが残りたる
水換へて黙あたらしき海鼠かな
煙茸ふみたき子らに数足らず
木耳の透けて血管らしきもの
映像喚起力の高い句が並ぶ。
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