『水になるまで』倉持梨恵句集(ふらんす堂)より
毛糸編むとき一分は六十秒
編み物のような手作業に没頭すると、つい時間を忘れることもある。しかしこの句は妙に冷静で事務的である。「一分は六十秒」というような自明のことを改めて言うことで、ちょっと可笑しみもある。この編み手は目を飛ばしたり、減らし目を間違えたりすることなく、きっと均等な編み目で完璧に仕上げるだろう。
夏兆すつま先立ちの探しもの
根上りの松にもつるる秋の蝶
秋刀魚焼く森のくまさん口ずさみ
初仕事座り心地の悪き椅子
大西日不意に終はりしガムテープ
剪定や枝も空気も切る鋏
座敷あるインドカレー屋春の月
極月や土鍋の下の火のゆがみ
倉持梨恵さんは炎環同人。
庭のフジバカマが咲いてきた。
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