2019年10月2日水曜日

『水になるまで』倉持梨恵句集

『水になるまで』倉持梨恵句集(ふらんす堂)より

毛糸編むとき一分は六十秒  

編み物のような手作業に没頭すると、つい時間を忘れることもある。しかしこの句は妙に冷静で事務的である。「一分は六十秒」というような自明のことを改めて言うことで、ちょっと可笑しみもある。この編み手は目を飛ばしたり、減らし目を間違えたりすることなく、きっと均等な編み目で完璧に仕上げるだろう。


夏兆すつま先立ちの探しもの

根上りの松にもつるる秋の蝶

秋刀魚焼く森のくまさん口ずさみ

初仕事座り心地の悪き椅子

大西日不意に終はりしガムテープ

剪定や枝も空気も切る鋏

座敷あるインドカレー屋春の月

極月や土鍋の下の火のゆがみ


倉持梨恵さんは炎環同人。






庭のフジバカマが咲いてきた。






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