最近刊行の、炎環同人の句集より。
人間に縫目のありし年の暮 (句集『無用』 市ノ瀬遙 紅書房)
傷の縫合跡のことだと思うが、傷跡と言わずに、ただ縫目と言ったところに、俳味、温かみあり。肉体の傷に限らず、精神的なものとも。年の暮に、しみじみと。
大葦切また虚子虚子と騒ぎけり (同)
今年の夏には、もう、そうとしか聞こえないかも。キョ、キョキョシ・・。
小春日やドン・キホーテの忌を知らず (句集『澄める夜』 こがわけんじ 紅書房)
句集の中に、忌日の句がとても多い。作者は常々、忌日を通して過去の文学者や芸術家、近しい故人と対話しているのだろう。そのなかで、ふと、ドン・キホーテの忌日にまで思い至ったのが可笑しい。ドン・キホーテは最後、白昼夢から覚めて死んだのだったか。そう思うと少し哀しい。
ポンポンダリア短命なりしわが家系 (句集『訪ふ』 万木一幹 紅書房)
短命なのは悲しいことだけれど、季語のポンポンダリアは明るい。短く充実して、ということだろうか。儚さへの憧れのようなものも感じる。
ところで私の家系も長命な方ではなく、多産でもないので親戚がとても少なくなってしまった。しかし、なんとなく、自分自身はしぶとく長生きしてしまいそうな気もします・・。
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