句集『蝶の骨格』榎本祐子(現代俳句協会) より
胸うすき姉よとうすみとんぼふうっ
「ふうっ」が印象的。何のどんな状態をあらわすオノマトペなのかは曖昧だけれど。胸うすき姉もとうすみとんぼも薄幸の気配があり、ふうっと消えていきそうな儚さがある。
麩のように麗子のために春来たる
一読、麗子像をイメージしたけれど、他にもたくさん有名な麗子さんはいる。特定の麗子ではないのかもしれない。麩の質感と春とは言われてみればつながるようにも思うけれど、素直な比喩ではなく、どこか屈折したものを感じる。
梅林を立ち泳ぎして抜けにけり
枇杷と猫くしゃくしゃにして雨だなあ
夏の蝶湧くわ湧くわと駆け出せり
冬虹の片足刺さる生家かな
初蟬やたぎり湯使い残したる
縄電車いちばん前は鳥の貌
陽炎を抜けし体の痛みけり
家付きの娘が漕いで春の沼
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