2021年2月11日木曜日

句集『蝶の骨格』榎本祐子

 句集『蝶の骨格』榎本祐子(現代俳句協会) より


胸うすき姉よとうすみとんぼふうっ

「ふうっ」が印象的。何のどんな状態をあらわすオノマトペなのかは曖昧だけれど。胸うすき姉もとうすみとんぼも薄幸の気配があり、ふうっと消えていきそうな儚さがある。


麩のように麗子のために春来たる

一読、麗子像をイメージしたけれど、他にもたくさん有名な麗子さんはいる。特定の麗子ではないのかもしれない。麩の質感と春とは言われてみればつながるようにも思うけれど、素直な比喩ではなく、どこか屈折したものを感じる。


梅林を立ち泳ぎして抜けにけり

枇杷と猫くしゃくしゃにして雨だなあ

夏の蝶湧くわ湧くわと駆け出せり

冬虹の片足刺さる生家かな

初蟬やたぎり湯使い残したる

縄電車いちばん前は鳥の貌

陽炎を抜けし体の痛みけり

家付きの娘が漕いで春の沼






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