2018年2月14日水曜日

句集『鴨』西村麒麟

句集『鴨』 (文學の森)
西村麒麟さんの第二句集。
読むのが遅くなって、春の鴨になってしまった。

宝舟ひらひらさせてみたりけり
獅子舞が縦に暴れてゐるところ
二人ゐて長さの違ふ蝿叩
手を舐めて脚舐めて蟻働かず
禁酒して詰まらぬ人として端居
盆唄に絶頂のあり佃島
枝豆は書き損じたる紙の上
俊成は好きな翁や夕焚火
舌の上にどんどん積もる風邪薬
蘭鋳の子が水中をよぢ登る
天牛の巨大に見えてきて離す
何の鮨あるか見てゐる生身魂

少し古風でとぼけた味わいは健在。

鰻重の蓋開けてゐる妻の顔
端居して妖しきものかいや妻か
向き合つてけふの食事や小鳥来る

第一句集『鶉』にも妻褒めの句があったが、ここでも幸福感が続いている。
句集を読んでイメージされる、作者のキャラクターが確立されている。


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