自註現代俳句シリーズ・12期 35 『岩淵喜代子集』(俳人協会)より
鶏頭は雨に濡れない花らしき
しれっとした嘘が楽しい。鶏頭ならそんなこともあるかも。
角のなき鹿も角あるごとくゆく
顔が思い浮かぶ。この鹿、可愛い。
初冬の船の食事の見えにけり
客船の食事というよりは、もう少し庶民的なものか。他人の生活を垣間見たことの驚きがある。
滲みでてくる鶏頭の中の闇
春深し鳥に背すぢのあることも
裸子のつまみどころもなかりけり
噴水の虹は手に取る近さなる
豆の筋たまりてそれもみどり色
遠くから見たき地球に糸瓜垂れ
ストーブに貌が崩れていくやうな
反対の崖にままこのしりぬぐひ
草紅葉足を運べば手の揺れて
自註の必要もない、くっきりとした句が並ぶ。
葉牡丹として大阪を記憶せり
面白い。
ところで、大阪万博、うまくゆくのだろうか・・・。
平常心を歩ませながら、目に入ってくる外界のそうとくべつでもない物事の面白さ、その発見を確実にキャッチしている。なにかセンスがありますねこの方。
返信削除吟さま おっしゃる通り、特別でもないことの面白さがありました。
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