『夏野』(青磁社)
みしみし連句つながりの、大室ゆらぎさんの歌集。
犬を連れてゐるゆゑ少しもあやしまれずにこころゆくまで岸にたたずむ
私のことかと思いました・・・。
速贄にされた蛙がひと冬を乾きつづけて薔薇の木にあり
うちの庭のことかと思いました・・・。
かなむぐらががいもひるがほ蔓草をたぐれば出づる根の国の声
作者は「死んだら蔓草になりたい」とのこと。
春の雨ゆふべに飢ゑてゆでたまごふたつを蛇のやうに呑み込む
窓辺にはなまぬるき風 人が実にさまざまな死に方をする「イリアス」
かぐはしき夏草の名のそれぞれをまだ容れてゐるわれとわが脳
これほどにおたまじやくしがゐるからはその四倍は出づる手と足
熟れすぎた桑の実を摘む潰さぬやうに 潰してしまふ
定型に身を委ねれば幾許かわれを失ふよろこびはあり
からみつくような文語体にうっとり。
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